** 野鳥の鳴き声を楽しもう No40 【リュウキュウサンショウクイ】 **
報告: 大井 智弘

はじめに
 「夏鳥のはずのサンショウクイを真冬に見た」「えっ?それはすごい」という会話をしていたのはいつ頃だったろうか?私は昭和生まれのバーダーで、勉強不足のため「サンショウクイは夏鳥」、「冬にサンショウクイ???なんでいるの?」、「リュウキュウサンショウクイ?琉球という名前がついているのだから沖縄にいるのだろう」という固定観念がすり込まれていた。
 しかし、近年「関東地方で真冬でも見られ、越冬しているサンショウクイは亜種リュウキュウサンショウクイである」というのがすでに定説なのだ。
 今回はその亜種リュウキュウサンショウクイに注目し鳴き声も紹介したい。
 なお、写真は鳥仲間の冨田英紀様(日本野鳥の会埼玉会員)から提供していただきました(感謝)。

 【リュウキュウサンショウクイ】
1 サンショウクイ(スズメ目サンショウクイ科サンショウクイ属)
 日本のサンショウクイには亜種サンショウクイ(Pericrocotus divaricatus)と亜種リュウキュウサンショウクイ(Pericrocotus divaricatus tegimae)の2種がいる。
 亜種サンショウクイは夏鳥として日本に渡来し、東南アジアで越冬する。
 亜種リュウキュウサンショウクイは、もともと沖縄県や九州南部にかけて留鳥であった。しかし、1990年代以降に九州北部や四国地方の西日本でも観察されるようになった。
 近年その生息地域はさらに北上傾向にあり、今では関東地方でも越冬期に観察されるようになっている。また2020年、神奈川県秦野市で繁殖事例も報告されている。

 【リュウキュウサンショウクイ】
2 サンショウクイという名前
 サンショウクイの鳴き声はよく「ピリリリ」、「ピーリーリー」、「ヒリリリ」と表現されるが、その鳴き声から「山椒は小粒でぴりりと辛い」ということわざが連想され「サンショウクイ」と名付けられたとの説がある。名前からてっきり山椒の実を好んで食べるのかと思っていたが、山椒の実は食べない。食性は動物食とのことだ。
 3 亜種リュウキュウサンショウクイの生息場所と鳴き声
 亜種リュウキュウサンショウクイが見られるようになったといってもいつでも、どこでもと言うわけにはいかない。森林を好む鳥で、それも樹木の高い所にいて昆虫類やクモなどを食べるので見つけにくい。しかし、亜種サンショウクイよりも標高の低いところで見られるので、平地の森林、公園、神社などでも見られる機会が増えている。

亜種リュウキュウサンショウクイの鳴き声
【録音】2021年12月 埼玉県比企郡吉見  22秒
 「ヒリリリ」、「ヒリリリ」と鳴く 
 亜種サンショウクイの鳴き声と比べると単調で抑揚がない
亜種サンショウクイの写真と鳴き声は「日本野鳥の会BIRD FAN」を参照していただきたい。

【参考文献】
(1)『BIRDER』2021年8月号
    「冬のサンショウクイは何者?」 NPO法人バードリサーチ研究員 三上かつら
(2)『日本の野鳥 さえずり・地鳴き図鑑』 NPO法人バードリサーチ代表 植田睦之 監修
(3)『野鳥の名前』 安部直哉 解説  山と渓谷社

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