*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No10 【コヨシキリ】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 ネットでコヨシキリについてのネタを探していると、日本野鳥の会埼玉の機関誌『しらこばと』のNo112 1993(平成5)年8月号 に出会った。そこには「白頭鷲の英名講座 第7回」という記事が掲載されていて、オオヨシキリとコヨシキリの英名からその特徴が解説されていた。
 毎月手にしている機関誌のバックナンバーに巡り会い、私は「灯台もと暗し」という言葉を思い出した。また、地道に資料をまとめて積み重ねていく事の大切さを改めて思い知った。記事の詳細についてはぜひ上記資料に当たっていただきたい。
 今回は、関東地方では毎年5月中旬以降に渡来し繁殖をする夏鳥コヨシキリの生態と鳴き声についてオオヨシキリと比較しながら紹介したい。


1 コヨシキリ(小葦切)スズメ目ヨシキリ科ヨシキリ属 全長:13.5~14cm

 コヨシキリの英名は、「Black-browed Reed Warbler(黒い眉の葦原でさえずる鳥)」である。顔の特徴は、正面からの写真①だと黒い側頭線(頭側線)があり白い眉斑が明瞭であることがわかる。オオヨシキリも眉斑があるが、不明瞭な個体もいる。オオヨシキリの写真は「野鳥の鳴き声を楽しもうNo8」 を参照してもらいたい。また、写真②のようにコヨシキリの口の中は黄色で喉は白い。
 生息環境は、図鑑等によると「コヨシキリは、低地から高原の湿地や丈の低い草原に生息するが、分布は局所的である。オオヨシキリは、低地の湖沼や河川敷などの水辺の広いヨシ原で多数見られる」とある。
【写真①】2020年7月 栃木市藤岡町 【写真②】2020年6月 栃木市藤岡町
2 コヨシキリの複雑なさえずり
 コヨシキリは葦の葉先や植物の高い所にとまってさえずる。その声は高く金属的な響きがあり、複雑なさえずりを繰り返す。オオヨシキリのさえずりに似ているが繊細で音量が少ない。オスは、周りに生息している数種類の他の鳥の声を取り込んでいるので聞きなしとして表現するのはむずかしい。埼玉県内での調査では、少なくともコチドリ、ヒバリ、ツバメ、セッカ、オオヨシキリ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリの8種の鳴き声をまねていたとの調査結果がある。
 活発にさえずるのは独身のオスで、つがいになるとほとんどさえずらなくなるが、メスが産卵するとさえずりを再開するオスと、さえずらないオスに分かれ、さえずらないオスは、他のオスのなわばりに潜入して、そこのメスとの浮気をねらうようだ。
  参考資料①:「Bird Research NewsVol.11 No.12」2014/12/26
  http://www.bird-research.jp/1_newsletter/dl/BRNewsVol11No12.pdf
  参考資料②:『見る聞くわかる 野鳥界 生態編』(信濃毎日新聞社)2016年
 さえずり:「ピーチュルピーチュルキリリリリリュージュジュジュジュ・・・・・・」など
 地鳴き :「ジッジッ」低く濁った声
 
【録音1】 2020年6月 栃木県栃木市藤岡町 
さえずり(ヒバリに聞こえるところはものまねか?)   54秒

【録音2】 2020年7月 栃木県栃木市藤岡町 
オオヨシキリとコヨシキリが一緒にさえずる    32秒
【動画1】 2020年7月 栃木県栃木市藤岡町 
背丈の高い植物につかまってさえずるコヨシキリ 32秒
【動画2】 2020年7月 栃木県栃木市藤岡町 
さえずりの出だし(前奏)にカワラヒワの声を入れるコヨシキリ 24秒
【録音3】 2020年6月 栃木県栃木市藤岡町 
コヨシキリのさえずりにツバメ、コチドリ、セッカのフレーズあるような?笑   36秒
3 ヨシ原の鳥たちのコーラス
  No8オオヨシキリの時もヨシ原で録音していると他の鳥たちの声が一緒に入ってきて思いがけないコーラスを録音することができた。コヨシキリも本州以北の平野部から山地のヨシ原や草原の環境を好むため他の鳥たちの声が入った録音ができた。しかし、ヨシ原は人間による大規模な開発によって減少の一途をたどっている。そのため、こうした環境下では野鳥たちの個体数の減少が著しい。今後、今回のコーラスを聞かせてくれた面々の先行きが心配でならない。

【写真③】2020年6月 栃木市藤岡町
 コロナ禍で気づかされた現代社会の行き過ぎた経済至上主義、それに伴う環境破壊等、私たちの生活をもう一度見つめ直していく必要があると考えさせられた。
【録音4】2020年6月 栃木県栃木市藤岡町
ヨシ原でのコーラス   1:35秒
コヨシキリ セッカ オオセッカ カッコウ 
ホトトギス オオヨシキリなどが続々と登場
(コヨシキリのものまねによる声もあるかも 笑)

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