*** 探鳥会風景 ***

01/18/'20 加須市・渡良瀬遊水地探鳥会
報告: 大井 智弘

 前日の天気予報では雨または雪で開催が心配されましたが、当日は雨が落ちてくることも無く探鳥会が行われました。
防寒着を着込んだ参加者21名は、冷たい北風が吹き抜ける谷中湖へと歩を進めました。谷中湖周辺には昨秋の台風19号の爪痕がそこかしこに残っていて、トイレは今でも仮設のものでしたし、濁流に流されてきた東屋の残骸などが見られました。
 谷中湖の南ブロックにはカモ類の群れが見られました。定番のマガモ、コガモ、カルガモのそばには「パンダガモ」と呼ばれるミコアイサのオス、遠くにはヨシガモ、さらにはトモエガモが観察されました。上空にはセグロカモメ、足もと近くにはジョウビタキ(メス)、オオジュリンなどの小鳥たちも顔を出してくれました。

 10分も歩くと中の島にある野鳥観察台に到着しました。谷中ブロックの低木にはノスリ、上空にはトビが北風に乗って悠々と舞ってくれました。しばらくすると、ベニマシコの「ピッポッ」と口笛のような地鳴きが聞こえてきました。

 寒さもあって急ぐように歩き始めると南ブロックに「カワアイサがいる」との声が聞こえてきました。フィールドスコープ(望遠鏡)で探すと、細くて先端が曲がった嘴で他のカモ類とは色合いの違うやや大きめの2羽が並んで泳いでいました。オスとメスでカップルが成立しているようでした。
 2012(平成24)年7月、渡良瀬遊水地はラムサール条約湿地に登録されました。本州以南では最大のヨシ原を擁する低層湿原で確認されている野鳥は252種でその内44種が絶滅危惧種であるとのことです。春秋にはシギチドリの渡りの中継地、初夏にはオオヨシキリ、コヨシキリの大合唱、夏の終わりには南の国に戻るツバメが10万羽以上も集結し、冬にはチュウヒをはじめとするワシタカ類の越冬地となっています。
 今回の探鳥会でもチュウヒの舞う姿が何度も確認されました。また、小鳥たちにとってヨシ原は絶好の隠れ場所であり、餌がとれる場所です。この日は市街地でよく見られるオナガも続々とヨシ原の中へ入っていく姿が見られました。
 さて、東谷中橋へ向かう途中には毎回ハヤブサと出会える場所があります。今日もいてくれるかなと目を向けると肉眼でも確認できるいい場所でお出迎えしてくれました。
 早速フィールドスコープで観察していると、参加者の中に右の写真のようにフィールドスコープの接眼レンズに専用のアダプターを使ってスマートフォンを取り付けている方がいらっしゃいました。「スマホ+スコープ」なので、略して「スマスコ」と呼ばれている手法です。
 上の写真の小さなハヤブサがご覧のとおりスマホにバッチリ写っているではありませんか。年々スマホの性能が驚くほど上がり、高画質の写真を撮ることができ、動画撮影も簡単にできるようです。私もぜひ挑戦してみたくなりました。

 休憩後、ゴールまでの道のりは「谷中村史跡保全ゾーン」を通りました。谷中役場跡の標識を見て、共同墓地、雷電神社跡のあるヨシ原を抜ける道を進むと、例年なら道沿いにアオジやホオジロなどの小鳥たちが顔を出してくれるのですが、今年はなかなか見られません。野鳥の種類は例年どおりであっても数は少ない感じがしました。どこの探鳥会でも野鳥の数が少ないと聞きます。やはり昨秋の大雨の影響で、この冬の野鳥の数が少なくなっているのかもしれません。
 寒い中を歩いてゴールの広場に12時前には到着することができました。鳥合わせの最中にベニマシコのオスが近くに現れて鳥合わせが中断するハプニングもありましたが、合計46種を数えることができました。北風に悩まされながら歩き疲れましたが、渡良瀬遊水地の冬らしい探鳥会を参加者一同楽しむことができたと思います。
 次回の加須市・渡良瀬遊水地探鳥会は3月中旬のヨシ焼き終了後の3月29日(日)に開催を予定しています。春の芽吹きを感じられる季節にまた多くの参加者のみなさんとお目にかかれることを楽しみにしております。

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