*** 野鳥の鳴き声を楽しもう No9 【ツバメ】 ***
報告: 大井 智弘

はじめに
 野鳥に興味のない人でもスズメと同様に知っているツバメ。昔から農家の人にとって農害虫を食べてくれるツバメはありがたい存在で、ツバメが巣をつくる家は繁栄すると言われ大事にされてきた。しかし、昨今、都市部ではツバメの糞を嫌うため巣を取り払ってしまう人たちが増え、人間との共存も危うくなってきている。それでも毎年桜が満開になる間近には東南アジアから渡って来て、日本で繁殖する代表的な夏鳥(暖地で越冬するものもいる)である。
 今回は、7月下旬~8月下旬の日没頃、ツバメがヨシ原に集団で「ねぐら入り」をする習性と鳴き声を中心に紹介したい。


1 ツバメ(燕) スズメ目ツバメ科ツバメ属 全長:17cm

 ツバメの特徴は、写真でもわかるように喉と額が赤褐色で、背中は黒いが青い光沢も見られる。腹部は白い。尾は長く、いわゆる燕尾(えんび)、裾が長く二つに分かれた礼服は燕尾服と呼ばれている。雌雄同色だが、オスの方がメスより尾が長い傾向があるので識別は可能である。
2019年7月 山梨県北杜市 2018年5月 埼玉県さいたま市 
2 ツバメの巣
ツバメは必ず人が生活している環境に営巣する。住宅の壁や軒先につくられるので見つけやすい。
商店街のアーケード、駅舎、高速道路のサービスエリアなど人通りの多い建物を特に好むのは、人が存在することで天敵から身を守り、より安全に子育てができるのが理由だと思われる。
【写真】2018年7月 埼玉県さいたま市
   ヒナに餌を与える親ツバメ
 【動画①】2020年6月 埼玉県飯能市 「巣作りに忙しい2羽のツバメ」 58秒
※ 土と藁などの草に自身の唾液を混ぜて巣をつくる
3 ヨシ原にねぐら入り
 ツバメ達は繁殖を終えると南の国に帰る準備をし始める。関東地方では7月下旬から8月下旬に子育てを終えて民家から離れたツバメは集団で暮らすようになる。昼間は大勢で餌をとり、夜は集団で河川や湖沼のヨシ原などに「ねぐら」を形成する。毎夜、日没前後の約30分の間に「ねぐら入り」が見られる。その数は、場所によって数千羽~数万羽を超えることもある。年によって、または日ごとにねぐら入りの場所が微妙にかわることもよくある。
2018年7月 埼玉県さいたま市
巣立ちヒナ
 ねぐら入りの様子を観察していると、夕方にねぐら近くの電線にとまって羽を休めているツバメが多くなり、頭の上を飛ぶ姿が見られるようになるが特に変化はない。だんだんと西の空に太陽が傾きだし薄暮の時間になると徐々にツバメたちが集まってくるが、それほど大群では飛んでこない。「今夜は場所を外したかな?」と不安になることもある(現にハズレのこともある)が、日没近くになるとどこから湧いてきたのかと思うほどの勢いでヨシ原に大群で入ってくる。
 目の前を「ピリリ、ピリリ・・・」と鳴き合いながら飛んでくる様子は壮観である。その後10分間くらいが「ねぐら入りショー」の見頃で続々とヨシ原に入っていく。しばらくして、ツバメに代わってコウモリが舞い始めると「ねぐら入りショー」が終わり、ピタッと静かになる。
【動画②】2020年7月 埼玉県さいたま市 「薄暮の時間に集まりだすツバメ」 37秒
※ 近くを飛んでくれたので鳴き声が聞こえる
【録音】2020年7月 埼玉県さいたま市 「ねぐら入りをするツバメの鳴き声」
「ピリリ、ピリリ・・・ビー、チュピチュピ、ジュルルルル」など    35秒
【動画③】2020年7月 埼玉県さいたま市 「続々とねぐら入りするツバメ」 54秒
【動画④】2020年7月 埼玉県さいたま市 「ヨシの先端付近に続々と留まるツバメ」 52秒

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